「常栄寺 雪舟庭」まるで水墨画の世界!山口市の紅葉スポット

山口県庁より北東へ、車で6分ほどの静かな場所にある「常栄寺(じょうえいじ)」は、知る人ぞ知る、密かな紅葉スポットです。

常栄寺の本堂北側に佇む庭園は、水墨画家「雪舟(せっしゅう)」が作庭したもので、緑の芝生と、景色を写す池、真っ赤な紅葉が作り出す世界は、訪れた者を魅了します。

1926年(大正15年)に国の史跡・名勝に指定された「常栄寺雪舟庭」へ、11月中旬の紅葉を見に行ってきました。

常栄寺の歴史

常栄寺は今から500年ほど前に、室町時代の守護大名だった「大内政弘(おおうちまさひろ)」の別邸として建てられたもので、作庭を「雪舟」が施しました。

その後、別邸は「妙喜寺(みょうきじ)」となりましたが、安芸国吉田の地で1563年(永禄6年)に創建された寺院である「常栄寺」が移転してきて、「常栄寺雪舟庭」となりました。

常栄寺には本堂の他、地蔵堂や茶堂、弘法大師堂などの建築物がありますが、一番の見どころはなんといっても、本堂北側の庭園「雪舟庭(せっしゅうてい)」です。

雪舟の作庭

子供の頃に涙で鼠の絵を描き、その才能を認められたことで有名な禅僧の雪舟は、室町時代に活躍した水墨画家でもあります。

中国の明で2年間水墨画を学び、日本独自の水墨画風を確立させた巨匠で、有名な代表作に「天橋立図(あまのはしだてず)」「秋冬山水画(しゅうとうさんすいず)」などがあり、それらは国宝に指定されています。

そんな雪舟ですが、その才能は水墨画だけにとどまらず、庭のプロデュースも多く手掛けており、九州や中国地方に多く残されています。

山口県山口市にある「常栄寺雪舟庭」は、島根県の「医光寺(いこうじ)」「萬福寺(まんぷくじ)」、福岡県の「旧亀石坊庭園(きゅうかめいしぼうていえん)」と並ぶ、「雪舟四大庭園」のひとつです。

 

本堂の北側約900坪の広さの庭園は、東、西、北の三方が山林に囲まれ、中央に大きな池「心字池」のある、「池泉回遊式庭園(ちせんかいゆうしきていえん)」となっています。

石だけで作られたシンプルな庭園ですが、その配置はち密に計算されていて、庭を眺める位置によって、様々な景色が楽しむことができます。

3つの視点で楽しむ

雪舟庭は、周囲をぐるっと一周できる遊歩道を散策しながら、趣のある表情を楽しむことができますが、「3つの需要な視点」を意識しながら眺めてみると、なお一層、庭園の魅力を感じることができます。

第一の視点:本堂から庭全体を見る。水を使わず岩や砂などで山水を表現した、日本庭園の洋式「枯山水(かれさんすい)」と、その奥の池泉、そして右奥にある雄大な枯滝「龍門瀑(りゅうもんばく)」が織りなす、立体的で水墨画のような世界。

第二の視点:本堂を背にして左手にある竹林側から見る。池泉や龍門瀑がよく見える。

第三の視点:本堂から少し右手にある書院跡から見る。庭園の広々とした空間を感じられる。

常栄寺雪舟庭を訪れたら、「3つの需要な視点」は押さえておきたいビュースポットとなっていますので、是非お試しください。

遊歩道を散策

常栄寺の山門をくぐり、右手にある受付で拝観料(入場料)を支払います。

石畳の道を北へ進み鐘桜門をくぐると、左手に本堂があり、靴を脱いで上がることができます。

 

本堂から見た雪舟庭の景色。第一の視点です。切り取られた絵葉書のような景色に、息を呑みます。

遊歩道の散策には特に順序などはなく、自由に見て回ることができます。筆者は今回、右手の書院跡のある方から、反時計回りに進んでいきました。

 

遊歩道は階段部分も多く、土がむき出しの場所も多いので、滑りにくい靴がおすすめです。

 

こちらは、第三の視点。広々とした庭園が、どちらかというと平面的な印象。

 

階段を上っていくと、大きな池が見えてきて、水面には紅葉が映り込んでいます。景色が徐々に、立体的に見えてきました。

 

枯滝を左手に眺めながら先へ進むと「毘沙門天入口」の看板があり、この先の階段をずっと上がっていくと、弘法大師堂、薬師如来堂、毘沙門堂の、3つの小さなお堂が点々としています。

筆者は頑張って毘沙門堂まで行ってみましたが、階段があまりきれいに整備されていないため歩きにくく、登りも下りも、かなりきつかったです。

 

「毘沙門天入口」の看板を左手へ進むと、「モリアオガエル」の産卵場所である「四明池」が。

「モリアオガエル」は、体長約40~80mmの緑色をしたカエルで、普段は森林で生活していますが、4~7月の繁殖期には池や沼へ集まり、水面近くの草木に卵を産みます。

近年ではその生息数は減っており、山口県では純絶滅危惧種に指定されています。

常栄寺には「池泉」「弁天池」「潜龍池」「四明池」の4つの池がありますが、四明池は水深が浅く魚がいないので、モリアオガエルにとっては貴重な繁殖地となっています。

 

庭園の西側には大きく立派な紅葉の木があり、芝生の緑と紅葉の赤のコントラストが素晴らしいです。

 

西側の第二の視点からは、北東側にある枯滝の全景がよく見えます。庭園の芝生や池が「静」だとしたら、枯滝は間違いなく「動」。ワイルドなその姿に目を奪われます。

遊歩道の散策は、庭園の周囲を一周するだけであれば、ゆっくり歩いても10分程度ですが、一歩進むごとに違った景色に移り変わっていくので、とても長い時間滞在したような、不思議な感覚になりました。

時代を繋いでいく庭

常栄寺雪舟庭には、有名な庭師の作品が他にもあります。

 

本堂南側にある「南溟庭(なんめいてい)」は、枯山水庭園のスペシャリスト「重森三鈴(しげもりみれい)」が昭和43年に作庭したもので、水墨画家雪舟が中国へ渡ったときの海をイメージして造られたそうです。

重森三鈴は、周南市鹿野上にある「漢陽寺」の庭園も手掛けており、こちらもとても素晴らしいお庭ですので、是非ご覧になっていただきたいです。

【漢陽寺】

住所:〒745-0302 山口県周南市鹿野上2872
電話:0834-68-2010
庭園拝観料:400円(中学生以下無料)
受付時間:9:00~16:00
駐車場:約20台(無料)

さらに、常栄寺の山門をくぐってすぐ目の前にある前庭「無隠(むいん)」は、平成24年作庭のもの。

室町時代、昭和、平成と、それぞれの時代の素晴らしい庭を一挙に楽しむことができるのも、常栄寺ならではの魅力です。

幻想的な夜のライトアップ

常栄寺雪舟庭では、ライトアップで夜の紅葉・庭園鑑賞が楽しめます。是非この機会にお楽しみください。

【秋のライトアップ】

期間:2021年11月20日(土)~11月23日(火・祝)
時間:18:00~21:00(最終入場20:30)
入場料:中学生以上300円、小学生以下無料

まとめ

有名な水墨画家、雪舟が作庭した常栄寺の庭園「常栄寺雪舟庭」の紅葉をご紹介しました。

広い芝生、空を映す池、躍動感のある立石、3方の山々と竹林。眺める場所によって、その印象が次々と変わる、不思議な庭園。

もはや紅葉は、脇役でしかないのかもしれませんが、この空間にあるすべてが一体となって、素晴らしい景色を作り上げています。

秋のライトアップが、短い期間ですが開催される予定ですので、昼間とは違う幻想的な夜の紅葉も是非お楽しみください。

【常栄寺】

住所:〒753-0011 山口県山口市宮野下200-1
電話:083-922-2272
開園時間:8:00~17:00(11月~3月は16:30まで)
定休日:年中無休
駐車場:無料
入場料:大人300円、中・高生200円、小学生以下無料

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